
受け口とはどのような状態なのか、自分や子供の歯並びを見て不安を感じていませんか。下顎が前に出ることで噛み合わせが逆になり、見た目だけでなく咀嚼や発音、さらには顎関節への影響まで及ぶことがあります。厚生労働省の調査でも、不正咬合は歯科受診理由の上位に挙げられており、多くの患者が生活の質に直結する問題として悩んでいるのです。
「子供の受け口は自然に治るのか」「大人でも矯正歯科で改善できるのか」「費用や期間はどれくらいかかるのか」こうした疑問を抱えたまま放置すると、成長とともに症状が悪化し、手術が必要になるケースもあります。逆に早期に治療法を理解し行動すれば、将来的な費用や心理的負担を抑える可能性も高まります。
最後まで読むことで、あなたやお子さまに合った改善の方向性を見極め、自信を持って治療を選択するための確かな知識が得られるでしょう。
受け口とは?反対咬合・しゃくれとの違いをわかりやすく解説
受け口の定義と特徴
受け口とは、下の歯または下顎が上の歯よりも前に出て噛み合っている状態を指します。医学的には「反対咬合」や「下顎前突」と呼ばれることもあります。見た目だけの問題ではなく、咀嚼や発音、顎関節への影響も関わるため、単なる見た目の特徴と捉えるのではなく、噛み合わせや健康全体に及ぼす影響として理解することが大切です。
一般的な正常な噛み合わせでは、上の前歯が下の前歯をわずかに覆うように並んでいます。しかし受け口の場合は逆に下の前歯が前方に突出し、上の前歯の外側に出てしまいます。この状態は、軽度であれば食事や会話に大きな問題が出ないこともありますが、症状が進行すると顎関節症や歯の摩耗などの健康リスクを伴う可能性があります。
また、受け口の特徴は一人ひとりで異なります。軽度の場合は前歯の一部だけが反対になっているケースもありますが、重度では奥歯まで反対の噛み合わせとなることもあります。さらに、骨格的な要因が大きい場合は顔立ちにも影響を及ぼし、横顔がしゃくれて見える原因になることも少なくありません。
受け口の症状を整理すると以下のようになります。
症状の種類 | 内容 |
歯列の症状 | 下の前歯が上の前歯より前に出ている、奥歯まで反対になっている |
機能的な症状 | 咀嚼効率の低下、発音障害(サ行やタ行が言いにくい) |
顔貌への影響 | 横顔がしゃくれて見える、下顎が強調される |
健康上のリスク | 顎関節への負担、歯の摩耗や歯周病の進行リスク |
このように、受け口は単なる「見た目」だけではなく、健康的な噛み合わせを維持するうえで見過ごせない症状です。特に成長期の子どもでは早期対応によって改善の可能性が高まるため、保護者が注意深く観察することが求められます。
反対咬合・下顎前突・しゃくれの用語の違い
受け口という言葉は日常的に使われますが、歯科医療では複数の専門用語が存在します。これらの言葉の違いを理解することで、治療を検討する際に正確な情報を得やすくなります。
まず「反対咬合」とは、歯列全体または部分的に上下の噛み合わせが逆転している状態を指す広い概念です。歯科診療で一般的に用いられる表現で、受け口は反対咬合の一つの形態といえます。
次に「下顎前突」とは、顎そのものが前方に成長している、もしくは骨格的に下顎が大きいことによって引き起こされる状態です。つまり歯並びの問題に加えて骨格の影響が強い場合に使われる用語です。外科的な矯正や長期の治療が必要になるケースもあります。
一方「しゃくれ」という表現は医学的な用語ではなく、日常会話で横顔が特徴的に見える状態を指す俗語です。下顎が前に出ている見た目を表す言葉であり、必ずしも全員が反対咬合や下顎前突に該当するわけではありません。つまり見た目に基づいた呼称であり、医学的診断では使われないという違いがあります。
用語の整理を表にまとめると次の通りです。
用語 | 意味 | 使用される場面 |
反対咬合 | 上下の噛み合わせが逆転している状態 | 歯科診断、治療方針の説明 |
下顎前突 | 下顎が骨格的に前に出ている状態 | 外科矯正が検討されるケース |
しゃくれ | 横顔の見た目が下顎突出に見える状態 | 一般会話、見た目の印象を表現 |
このように、同じ「受け口」を指していても使われる言葉が異なり、それぞれの意味を正しく理解することが重要です。特に治療を検討する際には、歯科医が「反対咬合」や「下顎前突」という専門的表現を用いるため、患者自身もその違いを把握しておくと安心です。
赤ちゃんや子供の受け口は自然に治るのか
多くの保護者が気にするのは「赤ちゃんや子供の受け口は自然に治るのか」という点です。乳幼児期には一時的に下の歯が前に出て見えることがありますが、これは顎や歯の発育がまだ不完全なために起こる自然な現象のことも多いです。成長とともに上顎の発達が進めば自然に改善されるケースもあります。
ただし、すべてが自然に治るわけではありません。遺伝的な骨格の影響が強い場合や、口呼吸や舌の使い方などの生活習慣による要因が重なると、成長しても受け口が改善しない可能性があります。そのため、子供の受け口に気づいた場合には、一定期間観察を行いつつ、必要に応じて歯科矯正医に相談することが推奨されます。
赤ちゃんや子供の受け口の自然改善と注意点を整理すると以下のようになります。
年齢 | 状態 | 自然に治る可能性 | 注意点 |
乳児期(0〜2歳) | 下の歯が一時的に前に出ることがある | 高い | 発達段階のため様子を見てもよい |
幼児期(3〜6歳) | 歯の生え変わりが始まる時期 | 個人差が大きい | 舌癖や口呼吸があると改善が難しい |
学童期(7歳以降) | 永久歯の生え変わりと骨格の発達が進む | 低くなる | 放置すると成人後の矯正が必要になる可能性 |
子供の受け口に関して大切なのは「早期発見」と「専門家への相談」です。特に乳歯が永久歯に生え変わる時期に適切なアプローチを行うことで、将来の大掛かりな治療を避けられることもあります。保護者が自己判断で「そのうち治るだろう」と放置するのではなく、気になる場合は小児矯正に対応した歯科医院で検査を受けることが安心につながります。
このように赤ちゃんや子供の受け口は自然に治る場合もあれば、放置すると改善が難しくなる場合もあります。成長段階に応じて適切に観察し、必要なタイミングで専門家に相談することが望ましい対応です。
受け口を放置するとどうなる?見た目・健康・心理への影響
見た目の印象(かわいい/コンプレックスの二面性)
受け口は外見に大きな影響を及ぼす症状であり、その評価は二面性を持っています。幼少期や赤ちゃんのうちは、下顎が少し前に出ている姿が「かわいい」と言われることもあります。しかし、成長とともにその印象は変わり、特に学童期から思春期にかけては「顎が出ている」「しゃくれている」という否定的な言葉で捉えられることが増えます。外見に対する社会的な評価が自己意識に直結するため、受け口を放置した場合には見た目に対する強いコンプレックスを抱くリスクが高まります。
受け口による見た目の特徴は、以下のように整理できます。
年齢層 | 見た目の印象 | 周囲の評価 | 本人が抱きやすい感情 |
幼児期 | 下顎の出っ張りが目立たない場合が多く「愛嬌がある」と言われやすい | 親や祖父母が「かわいい」と感じる | 気にすることは少ない |
学童期 | 横顔で下顎が前に出ているのが明確に分かる | 友達から「しゃくれ」とからかわれることもある | 恥ずかしさや違和感が芽生える |
思春期以降 | 大人っぽい顔立ちになるが、Eラインが崩れる | 「顎が出ている」という外見的特徴で印象が固定されやすい | 強いコンプレックスや自信喪失につながる |
美的観点からも、横顔の美しさを評価するEライン(鼻先と顎先を結んだ直線の内側に唇が収まる状態)が整っているかどうかは重要です。受け口は下顎が前に出ているため、下唇がEラインから大きくはみ出す傾向があり、顔のバランスが崩れて見えるのが特徴です。そのため成長とともに「かわいい」という評価から「整っていない」という評価へと移行してしまうのです。
このように受け口を放置すると、見た目に関する社会的評価が本人の自信や人間関係に影響を及ぼすため、心理的ストレスへとつながるリスクを持ちます。
咀嚼・発音・顎関節への影響
受け口を放置した場合、見た目の問題だけではなく、機能面にも深刻な影響が及びます。正常な噛み合わせでは食べ物を効率的に噛み砕くことができますが、受け口では上下の歯が適切にかみ合わず、咀嚼効率が低下します。その結果、食べ物を細かくすり潰せず消化器官に負担をかけることになり、長期的には胃腸への影響も考えられます。
発音面でも受け口は大きな影響を及ぼします。特にサ行やタ行といった歯と舌を使う発音では、空気の流れが乱れたり舌の位置が安定しないため、正確な発音が難しくなることがあります。子どもの場合は学校生活でのコミュニケーションに支障が出ることもあり、大人でも人前で話すことに苦手意識を持つ原因になり得ます。
さらに顎関節への負担も無視できません。噛み合わせが逆転しているため、顎関節に常に不自然な力がかかりやすく、長期的には顎関節症を引き起こすリスクが高まります。顎関節症は口を開けるときの音、痛み、口の開閉がスムーズにできないなどの症状を伴い、日常生活に大きな支障を与えます。
受け口による機能的な影響を整理すると次のようになります。
機能面 | 具体的な影響 | 放置した場合のリスク |
咀嚼 | 噛み切れない、飲み込みにくい | 消化不良、胃腸への負担 |
発音 | サ行、タ行、ラ行が不明瞭になる | 学校生活や仕事でのコミュニケーション障害 |
顎関節 | 顎に不自然な力がかかる | 顎関節症、慢性的な頭痛や肩こり |
このように受け口を放置することは、単に噛みにくいという不便さにとどまらず、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。咀嚼・発音・顎関節の三つの観点から見ても、受け口は放置すべきではない症状だといえます。
心理的ストレスと自信の低下
受け口を放置することで最も長期的かつ深刻な影響となるのが心理的側面です。見た目の印象や発音の不明瞭さから、学校や職場でからかわれたり誤解されたりすることが繰り返されると、自己肯定感が低下し、自信を失う原因になります。
特に思春期は自己評価が大きく揺れる時期であり、外見や発音に対する周囲の反応が本人の性格形成に大きく関わります。受け口による劣等感から人前で話すことを避ける、笑顔を控えるなど、行動の幅を狭めてしまうこともあります。その結果、コミュニケーションの機会を失い、社会的なスキルの発達に影響を及ぼす可能性があります。
心理的な影響を整理すると以下のようにまとめられます。
心理的側面 | 具体例 | 長期的なリスク |
自己意識 | 顎が出ていると意識して笑顔を控える | 表情が硬くなり印象が暗くなる |
コミュニケーション | 発音に自信がなく会話を避ける | 人間関係の希薄化 |
自己肯定感 | 見た目のコンプレックスで自信を失う | 不安感やうつ傾向につながる |
心理的な影響は外から見えにくいため軽視されがちですが、本人にとっては日常生活の質を大きく左右する問題です。放置した場合には見た目や機能面以上に、精神的なダメージが蓄積していきます。したがって、受け口を早期に改善することは、心の健康を守るうえでも非常に重要であるといえます。
受け口の治し方!子供から大人までの治療法を徹底比較
子供の治療(早期介入・予防矯正・トレーニング)
受け口の治療において最も効果が高いのは子供の成長期に行う早期介入です。顎や歯列がまだ柔軟に変化する小児期は、骨格や歯の位置を成長に合わせて誘導できるため、軽度から中等度の受け口であれば比較的短期間で改善が見込めます。この時期の治療は「予防矯正」とも呼ばれ、将来的に外科手術が必要となるリスクを軽減する重要な役割を担います。
代表的な小児期治療の方法には以下があります。
- 顎の成長を誘導する装置
上顎の成長を促進する装置や、下顎の前方成長を抑制する装置が用いられます。これにより顎のバランスを整え、自然な噛み合わせに近づけます。 - 機能的矯正装置
子供の口の中の筋肉や舌の動きを利用して正しい顎の位置を誘導する装置です。特に下顎の突出を抑える場合に有効です。 - 口腔筋機能療法(MFT)
舌や唇の筋肉を鍛えるトレーニングを行い、悪い癖(舌で歯を押す、口呼吸など)を改善します。装置と併用することで効果が高まります。 - 生活習慣改善
頬杖やうつぶせ寝など顎の成長に悪影響を与える習慣を見直し、受け口の進行を防ぐことも重要です。
年齢ごとに適した対応をまとめると以下のようになります。
年齢 | 主な治療法 | 特徴 |
3〜6歳 | 機能的矯正装置、MFT | 習慣改善と成長誘導が中心 |
7〜10歳 | 顎の成長をコントロールする装置 | 上顎拡大装置や牽引装置を使用 |
11歳以降 | 本格矯正に移行 | 永久歯の生えそろいに合わせる |
このように子供のうちに治療を開始することで、将来的な治療の負担を軽減し、心理的なコンプレックスの発生を防ぐことができます。早期発見と専門医への相談が最も重要なポイントです。
マウスピース矯正(インビザラインファースト含む)
近年注目されている治療法にマウスピース矯正があります。特に透明なマウスピースを段階的に交換して歯並びを整えていく方法は、従来のワイヤー矯正に比べて目立ちにくく、取り外しが可能で衛生的という大きな利点があります。さらに、装置が口腔内に固定されないため口内炎などのリスクが少なく、食事の際も普段通りの食生活を送りやすい点が大きな魅力です。見た目に配慮しつつも快適に続けられる点は、多くの患者にとって心理的な負担を減らす効果があります。
マウスピース矯正は大人だけでなく子供にも対応可能で、インビザラインファーストのように成長期に合わせた専用のプログラムも登場しています。これにより、子供でも透明な装置を使って受け口の改善を図ることが可能になりました。成長に合わせて顎や歯の位置を誘導できるため、将来的に大掛かりな治療を回避できる可能性が高まる点も大きなメリットです。さらに、デジタル技術を用いたシミュレーションにより、治療前におおよその経過を可視化できることから、患者や保護者が安心して治療を選択できる仕組みが整えられています。
マウスピース矯正の特徴を整理すると以下のようになります。
特徴 | 内容 |
目立ちにくさ | 透明な素材で周囲に気づかれにくい |
取り外し可能 | 食事や歯磨きの際に外せるため衛生的 |
治療の快適さ | ワイヤー矯正に比べて痛みや違和感が少ない |
治療対象 | 軽度〜中等度の受け口に適応、重度の場合はワイヤー併用が必要 |
子供用プログラム | インビザラインファーストにより成長期にも対応可能 |
ただしマウスピース矯正には注意点もあります。装着時間が十分でないと効果が得られず、自己管理が欠かせません。また重度の骨格性受け口の場合には単独では効果が難しく、ワイヤー矯正や手術との併用が必要となることもあります。加えて、自己管理が難しい子供や忙しい社会人の場合は、治療効果を最大限に発揮できない可能性があるため、ライフスタイルに合うかどうかを事前に検討することが大切です。
それでも、審美的な面と生活の快適さを両立できる治療法として、マウスピース矯正は幅広い層に選ばれています。特に「目立たずに矯正したい」「仕事や学校生活で人に気づかれたくない」と考える人にとっては大きな選択肢となり、今後ますます需要が高まる治療法といえます。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正の違い
受け口の治療法を検討する際に多くの方が迷うのが、ワイヤー矯正とマウスピース矯正のどちらを選ぶべきかという点です。両者にはそれぞれのメリットとデメリットがあり、症例の重さや患者のライフスタイルによって最適な方法が変わります。特に、仕事や学校など人前に出る機会が多い方は装置の目立ちやすさを重要視することが多く、また痛みや清掃のしやすさといった日常生活に直結する要素も治療選びの決め手になります。さらに、治療期間中にどの程度自己管理が必要になるかも重要であり、患者の性格や生活習慣によって適した治療法が異なるのです。
比較を表にまとめると以下の通りです。
項目 | ワイヤー矯正 | マウスピース矯正 |
見た目 | 装置が目立ちやすい | 透明で目立ちにくい |
適応範囲 | 軽度〜重度まで幅広い | 軽度〜中等度が中心 |
治療の正確性 | 医師による微調整が可能で高精度 | デジタルシミュレーションで計画的に進める |
痛み | 歯の移動時に違和感が強いこともある | ワイヤーより軽度 |
取り外し | 固定式で外せない | 食事や清掃時に取り外し可能 |
自己管理 | 管理不要 | 装着時間の自己管理が必須 |
費用 | 比較的幅広いが一定の負担 | ワイヤーより高額になる場合もある |
ワイヤー矯正は幅広い症例に対応できる点で優れており、特に骨格性の受け口など複雑なケースでは効果的です。歯の細かな移動を医師が直接調整できるため、治療の正確性と安定性が高いことが特徴です。一方マウスピース矯正は生活の質を保ちながら治療を進めたい方に適しており、透明で目立ちにくいことから審美性を意識する人に選ばれやすい治療法です。さらに、取り外し可能であるため食事や歯磨きがしやすく、口腔内を清潔に保ちやすい点も魅力です。ただし、自己管理が欠かせないため、きちんと装着時間を守れる人でないと十分な効果が得られない場合もあります。
重要なのは、見た目や快適さだけで選ぶのではなく、自分の症状に合った方法を専門医と相談しながら決定することです。受け口の治療は数年にわたる長期的なプロセスとなるため、見た目の改善だけでなく、機能面や生活リズムに適した方法を選ぶことが成功の鍵となります。さらに、治療後の安定性や後戻り防止の観点からも、医師と綿密に相談し、自分に合った治療計画を立てることが大切です。
受け口と外科手術!手術が必要なケースとリスク
矯正だけで治せるケースと手術が必要なケース
受け口の治療には矯正治療のみで対応できる場合と、外科手術が必要になる場合があります。一般的に矯正だけで治せるのは歯の位置に問題がある「歯性の受け口」であり、骨格自体に大きな問題がある場合は矯正単独では限界があり、外科手術の併用が必要とされます。
歯性の受け口は、上の歯と下の歯の傾きや並び方によって噛み合わせが逆になっているケースです。この場合はワイヤー矯正やマウスピース矯正で歯列の位置を整えることで改善できることが多く、治療期間も数年程度で済むことが一般的です。
一方で、骨格性の受け口は上下顎の成長バランスが崩れているために発生します。下顎が過度に前に成長している、あるいは上顎の成長が不十分であるといったケースでは、歯列をいくら動かしても根本的な改善は難しく、手術によって骨格の位置そのものを修正しなければなりません。
判断基準を整理すると以下のようになります。
判定ポイント | 矯正で改善可能な場合 | 手術が必要な場合 |
症状の種類 | 歯の傾きが原因の軽度受け口 | 下顎の突出や上顎の劣成長による骨格的な問題 |
横顔の印象 | Eラインの崩れが軽度 | 横顔で顎の突出が著明 |
治療法 | ワイヤー矯正、マウスピース矯正 | 矯正+外科手術 |
治療期間 | 2〜3年程度 | 手術前矯正+手術+術後矯正で数年かかる |
適応年齢 | 子供・大人問わず可能 | 主に成長が止まった大人 |
このように矯正と手術の選択は、症状の重さや骨格的要因の有無によって大きく異なります。特に成人で骨格的な原因が明らかな場合には外科的な治療が必要となる可能性が高く、専門医による診断が不可欠です。
顎変形症と診断される条件
顎変形症とは、上下の顎の骨格のバランスが大きく崩れている状態を指す診断名です。受け口の中でも特に骨格的要因が強い場合に用いられ、この診断が下されると外科的矯正治療の適応となる可能性があります。顎変形症は単なる歯並びの不正ではなく、噛み合わせ・顔貌・機能に大きな影響を及ぼす疾患として扱われ、生活の質や将来的な健康状態にも深く関わる重大な問題とされています。
診断基準は複数ありますが、一般的には以下の要素が重視されます。
- 噛み合わせの異常
上下の歯が正常にかみ合わず、咀嚼や発音に支障をきたしている。 - 顎骨の位置異常
レントゲンやCT検査で上下顎の位置に大きなずれが認められる。 - 横顔や正面顔のバランスの崩れ
下顎が前方に突出している、顔の非対称があるなど、審美的にも顕著な異常がある。 - 機能的障害
顎関節症状(開閉時の痛みや音)、咀嚼障害、発音障害が見られる。
これらの診断に基づいて顎変形症と判定されると、健康保険が適用される外科的矯正治療の対象となる場合があります。特に日本では、顎変形症に対する外科矯正は一定の基準を満たせば公的保険が適用されるため、経済的な負担が大きく軽減されるのが特徴です。さらに保険診療で行われる場合、大学病院や指定の医療機関で治療を受けることが多く、安心して長期的なサポートを受けられる点もメリットとなります。
診断条件 | 内容 |
噛み合わせ | 咀嚼や発音に支障をきたすレベルの不正咬合 |
顎骨の位置 | レントゲンで明確な骨格の前後差や左右差 |
顔貌の異常 | 下顎突出、非対称など審美的な問題が顕著 |
機能障害 | 顎関節症、咀嚼障害、発音障害 |
このように顎変形症と診断されるかどうかは、見た目だけでなく機能面も含めた総合的な判断によって行われます。診断には経験豊富な専門医による正確な検査が欠かせず、早期に対応することで症状の進行を防ぎ、より良い治療結果につなげることが期待できます。
外科手術の流れとリスク
外科的矯正治療は、矯正治療と外科手術を組み合わせて行う大掛かりな治療です。流れとしては、まず術前矯正で歯並びを整え、その後に手術で顎の骨格を移動させ、最後に術後矯正で噛み合わせを仕上げるという段階を踏みます。この一連の流れは単なる見た目の改善だけでなく、咀嚼機能や発音機能の回復を目的とした総合的な医療行為であり、治療後の生活の質に直結する重要なプロセスといえます。
手術の方法には下顎骨を後方に移動させる術式や、上顎を前方に移動させる術式、さらには上下顎の両方を移動させる複合手術などがあります。どの方法を選択するかは症状の程度や骨格の状態によって異なり、患者ごとに精密な診断が必要です。また、顔貌のバランスや横顔のラインといった審美的要素も考慮されるため、医師と患者が治療後のイメージを十分に共有することが求められます。
治療の一般的な流れは次のようになります。
- 初診相談と精密検査
レントゲン、CT、模型を用いた分析で治療計画を立案。 - 術前矯正
数年かけて歯列を整え、手術で骨格を移動しやすい状態にする。 - 外科手術
全身麻酔下で顎の骨を切り、正しい位置に移動させて固定。 - 術後入院とリハビリ
入院期間はおよそ1〜2週間。食事や発音の回復に向けてリハビリを行う。 - 術後矯正
歯並びと噛み合わせを仕上げるため、さらに矯正を継続。
外科手術にはリスクも伴います。代表的なものとしては、術後の腫れや痛み、しびれ(神経損傷の可能性)、感染、出血などが挙げられます。加えて、全身麻酔に伴うリスクや入院生活の制限も無視できません。また、骨格を移動させるため術後に一時的な咀嚼や会話の不便さを感じることもあります。さらに長期的には「後戻り」と呼ばれる骨格や歯列の再変化が起こる可能性もあり、術後の管理と定期的な通院が欠かせません。特に術後のセルフケアや医師の指導に従ったリハビリの有無が、長期的な安定性に大きな影響を及ぼします。
手術のメリットとリスクを整理すると以下のようになります。
項目 | メリット | リスク |
噛み合わせ | 根本的に改善される | 後戻りの可能性 |
見た目 | 横顔や顔貌のバランスが整う | 術後の腫れやしびれ |
機能 | 咀嚼・発音の改善 | 神経損傷、感染リスク |
精神面 | コンプレックスの解消、自信回復 | 長期治療による精神的負担 |
外科的矯正は大きな決断を伴う治療ですが、矯正単独では解決できない重度の受け口を根本的に改善できる唯一の方法でもあります。そのため、症例ごとのメリットとリスクをしっかり理解したうえで、専門医と十分に相談して治療方針を決めることが重要です。さらに、手術を検討する際には生活スタイルや将来的なライフイベントも考慮に入れる必要があり、長期的な視点での治療計画が患者に安心感を与える大切な要素となります。
まとめ
受け口とは、単なる見た目の問題にとどまらず、咀嚼や発音、顎関節の機能、そして心理的な側面にまで影響を及ぼす重要な症状です。歯科医療の現場では「反対咬合」「下顎前突」といった専門用語で扱われ、厚生労働省の調査でも不正咬合が生活の質を下げる要因として報告されています。特に成長期の子供では、早期に対応すれば改善の可能性が高く、将来的に大掛かりな外科手術を回避できることも多いのです。
一方で、大人の受け口は骨格が固定されているため、矯正治療だけでは限界があり、外科手術との併用が必要になるケースも少なくありません。矯正歯科で行われる治療法にはワイヤー矯正やマウスピース矯正(インビザライン)などがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。生活習慣の改善や装置の種類選びによって治療の成果は大きく変わり、自己管理や専門医の指導が成功のカギを握ります。
また、受け口を放置すると顎関節症や消化不良などの健康リスクに加え、見た目へのコンプレックスや発音の不明瞭さによる心理的ストレスが重なります。「費用が気になる」「期間が長そう」と迷って先延ばしにすると、結果的に治療が複雑化し負担が大きくなる可能性もあります。
受け口は自然に改善する場合もありますが、すべてのケースがそうではありません。子供の成長期から大人まで、それぞれに適した治療方法が存在します。信頼できる矯正歯科で早めに相談し、自分や家族に合った治療計画を立てることが、将来の健康と自信を守る最善の一歩となるでしょう。
よくある質問
Q.受け口の治療にはどのような方法があり、費用や期間はどれくらいですか
A.軽度のケースではマウスピース矯正やワイヤー矯正で改善が可能で、治療期間はおよそ2〜3年程度です。金額は装置の種類や医院によって幅がありますが、数十万円から百万円を超えるケースまであります。成長期の子供であれば予防矯正により短期間で改善することも多く、大人の場合は骨格が固定されているため時間と費用がかかる傾向にあります。
Q.矯正だけで治せない受け口の場合、手術はどのように行われますか
A.骨格的に顎の位置が大きくずれている顎変形症では、矯正だけでは限界があり外科手術が必要です。治療の流れは術前矯正で歯並びを整え、全身麻酔下で下顎を後方に移動させたり上顎を前方に移動させる手術を行い、その後に術後矯正で噛み合わせを仕上げます。入院期間はおよそ1〜2週間、全体の治療期間は数年単位に及ぶことが多いです。リスクとしては腫れやしびれ、神経損傷などが挙げられますが、専門の医療機関で適切に行えば根本的な改善が期待できます。
医院概要
医院名・・・さいわいデンタルクリニックmoyuk SAPPORO
所在地・・・〒060-0062 北海道札幌市中央区南二条西3丁目moyukSAPPORO2F
電話番号・・・011-206-8440